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インタビュー「僕のルール・私の理由」

世界の子供にワクチンを・・・JCV

東京・原宿の神宮前交差点に面した赤い屋根の洋菓子屋さん。ここに、発売開始から連日完売が続くロールケーキがあるのをご存知でしょうか。「原宿ロール」と名付けられたこの新名物、1本売れるごとに1円ずつ、世界の子どもたちにワクチンが寄付されています。洋菓子をつくり続けて86年。日本洋菓子界の老舗であるコロンバンさんがはじめた寄付について、社長の小澤俊文さんにうかがいました。
株式会社コロンバン 代表取締役社長 小澤 俊文さん

伝統をいかしながら、新しいお菓子づくりをめざそう 85周年を前に社員全員が、本気で変わろうとしていた

 

1924年の創業以来、洋菓子界の草分け的存在として、日本のみなさまに洋菓子をご提供してきました。ところが、創業から半世紀以上がたったころ、カリスマ的な存在だった創業者が亡くなり、バブルが崩壊します。会社は挑戦することを忘れ、伝統の延長線上でしかものごとを考えられない状況に陥ってしまいました。リストラも経験しました。本当に世の中に必要とされる企業であり続けていくには何かが足りない、このままではいけない。
会社に残った自分たちが変わらなくてはいけないと決意しました。


そこで、歴史を振り返り、これからも大事にするべきもの、自分たちに足りないものを見つめ直しました。特に、商品開発力や情報発信力が不足しているという結論になり、社員みんなで取り組んでいくことを決めたのです。そんな中、2009年に会社が85周年を迎えました。全社から85周年を機に身の丈にあった社会貢献は何ができるか記念事業案を募ったところ、エコキャップ活動(ペットボトルのキャップを回収しワクチンを贈る)のアイデアがあったんです。すぐに、社員のボランティア活動として取り組みをはじめました。シールなどはきれいにはがしてキャップを洗い、乾かしてから回収先へ送ります。業務時間外に熱心に作業する社員の姿を見て、それまでのコロンバンにはなかった何かが生まれつつあるのを感じました。

コロンバン

1924年創業のコロンバン。日本で唯一、創業時より宮内省御用達の洋菓子メーカーです。

コロンバン

創業者の門倉國輝氏は洋菓子作りだけでなく、多くのフランス文化を日本に紹介した立役者。

会社がどんな状況でも続けられるか? 洋菓子屋の自分たちにとって一番大切なこと

同じく85周年の記念事業として企画したのがこの原宿ロールでした。原宿の新名物をつくろうと、社内を横断するプロジェクトが立ち上がり、素材も製法も、ケーキに刻印する「原宿」の文字のデザインまですべてにこだわり、知恵を出し合って開発しました。季節や流行の変化に左右されないような、ながくお客さまに愛される商品をつくりたかったんです。同時に、社会に役立つ存在であり続けたいとの想いを、商品にこめようと考えていました。エコキャップの支援先であるワクチン寄付ならば、善意が無駄になることなく子どもたちに届けられる。そう信頼できたため認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会(以下JCV)への寄付を決めました。子どもの幸せとお菓子がもたらすよろこびは相性がいい、というご縁もありましたね。


ところで生菓子は季節性もありますし、1日で期限が来てしまうロス率が高い商品です。菓子業界というのは一見華やかに見えますが、実はとても薄利で厳しい世界なんです。だから、これが売れそうだからたくさん寄付しよう、というようなことをしてもすぐに立ちゆかなくなってしまう。そのため、続けるということを一番に考えて、「1本につき1円」という体力に合ったしくみを考えました。商売の都合で簡単にやめてしまわないように、小さなスタートですが、私たちは寄付を続けていくことに価値があると考えています。


コロンバン

ショートケーキは、門倉氏がフランスでの修業を経て考案し、コロンバンが生みだした日本のオリジナルだそうです。

コロンバン

「原宿ロールはすべてパティシエが手で巻いて、丁寧に作っているんです」そのため、本数限定で販売されているそう。

コロンバン

原宿本店では若い方から年配の方まで幅広い層の方たちが、羽田空港ではビジネスマンの方たちが、それぞれ原宿ロールを買って行かれるそうです。

業務命令でもPRでもない。草の根のように じわーっとつながっていく活動にしていきたい

原宿ロールでワクチンを寄付していることを知っていただいているお客さまもいます。昨日も若い女性のお客さまから、「何本売れたの?」とおたずねいただきましたが、私たちは、お店では寄付のことをあくまでもさりげなく紹介するようにしています。今回の取り組みについては、社外へのアピールというよりも、まず社内で、自分たちが小さくとも社会貢献をしているんだという意識を社員にもってもらうことが大事だと思っています。それも決して上から口に出して言うのではなくて、じわーっと、しぜんに1人1人の心に広がって、仕事の誇りにつながっていけばいいなと思うんです。おかげさまで、原宿ロールが毎日完売というご評価をいただいていますが、商品力はもちろん、販売するスタッフ、営業マンの熱意が高まっていて、そういった内側からの変化の結果ではないかな、と思っています。


実は、原宿ロールの寄付には、「1万人分のワクチンを贈る」という目標をそえています。昨年10月末の発売以来、こつこつと取り組んで参りましたが、2010年7月9日を持って、当初目標の1万人分のワクチン購入金の寄付が達成できました。新たな目 標として、更に1万人分のワクチン提供をめざし、引き続き活動を続けて参ります。

コロンバン

「私は、企業が世の中に存続するのは社会に必要とされているからであり、そもそも事業を続けること自体が社会貢献だと考えています。ですがエコキャップ活動は、社員のなかから生まれた声であるから、手探りでもやってみることにしました」

コロンバン

この日、社長の小澤さん以下、営業系の社員の方たち全員がワクちゃんのバッチを胸につけていました。日ごろから、取引先など社会貢献に興味のある方に、JCVのワクチン支援活動のことを伝えるために実施しているそうです。


小澤さんは以前、横浜のある教会に通う子どもたちのためのお菓子を贈ったことがあったそうなんだ。「シスターからお礼の手紙が届いて。身寄りのない子どもたちで、年に1度のクリスマス会でだけおいしいお菓子が食べられたことを…とても喜んでくれたそうです。それを読んで…」後は、声にならなかった。その場にいた僕たち、会社の重役の方たちもみんな、言葉を失った。小澤さんの根っこの気持ちを、垣間見た気がしたよ。

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