



訪問美容というのは、素敵なサービスですね。どんな経緯ではじめられたのでしょうか。また、ルールの内容についても、詳しく教えてください。
2008年から「訪問美容ハートウィル」という事業をはじめました。これは、美容師をしていた友人のアイデアが源ですが、最初のうちは本当にそんなことを喜ぶ人がいるのかなぁ〜という感じで、ぴんときませんでした。でも、ある日、美容院に行ったら車椅子に乗ったおばあさんとその娘さんが来られたんです。おばあさんは、希望の髪型があったようですが、娘さんが「頻繁に美容院に来られないから、短くしましょう」と。それを見て、女性はいくつになってもきれいでいたいんだ、ということがよく分かりました。
ルールは、施設にいらしっゃる方に訪問美容のサービスをさせていただいたらポリオワクチン1人分(約20円)、在宅の方の場合は、はしかワクチン1人分(約95円)としました。施設に出向くときは在宅よりも料金を割安に設定しているので、寄付の金額にもそれに合わせています。
JCVの活動は、和田投手のCMを通して知っていました。僕も自分の事業を立ち上げたら継続的な支援をしたいと思ってたんですが、利益が出てからではなくて、すぐにはじめたいと思いました。ですから、この事業を立ち上げると同時くらいにルールをつくって、寄付をはじめました。
「ふれんず」での訪問美容。スタイリストの中山道代さんと、エリアマネージャーの後藤めぐみさんの2人で、てきばきとカットを行っていきます。「お客様に、いただいた料金のなかからワクチンに寄付しているんですよ。と言うと、いいことしているわねぇ〜と言われます」(後藤さん)。

日本では、まだ堂々と寄付をするという文化がありませんが、小林さん自身は寄付をする時に、迷いなどはありませんでしたか。
日本では「偽善者ではないか」と言われてしまうこともありますし、いろいろ考えちゃうと、行動をやめてしまう理由はいくらでもあると思うんです。まだ事業を立ち上げたばかりで早いとか、今は不況だからとか。でも、僕自身はそういう時、とにかくやってみることにしているんです。そうしたら、白でも黒でもない、もっと別の思いがけないステキなことが出てくることがあるんです。
最近は、「ふれんず」という障害者の方のための活動支援センターにも訪問美容で出かけるようになりました。こちらは、通常料金よりも低価格でサービスをご提供し、支援をさせてもらっていますが、いただいた料金からワクチンを寄付しています。この寄付が、ふだんは支援を受ける側にいる高齢者や障害者の方たちにとって何かいい希望になってくれるとしたらうれしいです。
「ふれんず」指導員の水挽由美子さんのおはなし。「2009年4月から、ハートウィルのサービスを利用しています。低料金で、この施設内でサービスを受けられるのは、とてもありがたいことです。それに、このセンターの人たちは、普段は外部の人と接する機会が少ないので、そういう意味でも大事な時間だと思います」。

寄付をするようになってから、なにかご自身のキモチに変化はありましたか。
日々のなかでは、とくに大きな変化はありません。でも、テレビなどで和田投手がワクチン寄付についての取材を受けているのと見ると「あ、僕もこれをやっているんだ!」と、うれしくなりますね。
うちの会社の場合は、寄付金は月ごとに締めて送らせてもらっています。電気代とかと同じように、毎月のほうがなんとなくリアリティがある(笑)。寄付金を送るとJCVから領収書が届きます。これには手間もお金もかかることなので申し訳ないとも思うのですが、領収書を見るとはげみになりますね。それにスタッフさんにも見せることもできますしね。
支援の輪を広げようと思ったら、楽しめる要素を盛り込むことが大事だと思います。「今日はワクチン、明日は学校を作る、明後日は森林保護」のように、寄付先がちがう募金付きの自動販売機を置いて、飲み物を買えるようにしたりしてもいいかもしれませんね。自分で支援を決めるという意識が出ますし、選ぶことは楽しいですからね。日本でもやり方次第で寄付文化が根付いていくと思います。
ハートウィルのサービスを受ける方は、単に髪を切ってもらうことだけでなく、おしゃべりすることを楽しみにしている人も多いそうです。午後からのサービスなのに、早くから掃除をして午前中から心待ちにしてくれる方もいらっしゃるとか。
小林さん「ガンで余命が少ない方が、ハートウィルのサービスを受けてニコッと笑ってくれたことがあるんです。そういうシーンに出会えると、やっていてよかったなと思います」。

小林さんが初めてJCVの事務所に協力提案に来られたとき、「普段は他の人から助けてもらっている方が、ワクチン寄付に参加することで、誰かを支え、社会に参加しているという気持ちになってもらえたら良いと思って」と言ってくれたんだ。ビジネスのしくみを考えるのが上手な小林さんならではの、ひろがるルールなんだろうな。







